上顎洞底挙上術①
2024年2月6日
インプラント治療に関心をお持ちの皆様と、歯科のプロフェッショナルの方々へ向けて、今回はインプラント治療のキーテクニックである「上顎洞底挙上術」に焦点を当て、易しく解説いたします。
上顎の奥歯を失った際には、骨量が不足しているという問題にしばしば直面します。この問題を解決し、インプラントを確実に支持するためには、骨量を「増やす」必要があります。以前は、インプラント治療の成功には豊富な骨量が必要不可欠だとされ、患者自身の腰骨や加工された動物由来の骨を使って骨量を増やす手法が広く採用されてきました。
しかし、最新の研究は、かつて考えられていたほど多くの骨を作る必要がないことを示しています。ここで紹介する研究は、上顎洞底挙上術において、大量の骨補填材(牛の骨)を用いたグループと、全く使用しなかったグループを比較した、信頼性の高い「ランダム化比較試験」です。この研究では、手術前に患者様を両グループに分け、その後の経過を比較しました。結果は1年後と5年後の両時点で公表されており、それぞれのリンクから詳細を確認できます。
1年後の結果:
Osteotome sinus floor elevation with and without grafting material in the severely atrophic maxilla. A 1-year prospective randomized controlled study
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5年後の結果:
Short implants placed with or without grafting into atrophic sinuses: the 5-year results of a prospective randomized controlled study
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結果からは、補填材を使用したグループで骨の量が多かったにも関わらず、インプラントの成功率において両グループ間で有意な差は見られなかったこと、実際には補填材を使用しなかったグループの方が若干良い成績を示したことが分かりました。これは、インプラント治療において骨を増やすこと自体よりも、インプラントが安定して機能することを最優先に考え、より安全で低侵襲な治療方法を選択すべきであることを示唆しています。
当院では、これらの最新の研究成果を踏まえ、上顎洞底挙上術を行う際には、大多数のケースで骨補填材を使用しないアプローチを採用しています。これにより、患者様の手術に関連する負担を顕著に軽減できるよう努めています。
インプラント治療の分野は日々進化しており、患者様だけでなく、専門知識を深めたい歯科関係者にとっても、新しい知見は大変貴重です。私たちの目標は、皆様が適切な治療選択ができるように、最新の研究に基づいた正確で理解しやすい情報を提供することです。