上顎洞底挙上術②
2024年2月13日
インプラント治療に興味をお持ちの皆さまや、歯科の専門知識を深めたい関係者の方々へ、今回も前回に引き続き、上顎洞底挙上術(サイナスリフト)に関する重要な研究成果をお伝えします。
今日ご紹介するのは、「Interventions for replacing missing teeth: augmentation procedures of the maxillary sinus」という題目の論文で、これは2010年に初めて公開され、2014年に改訂されたコクランレビューです。
2010年版
2014年版
この研究では、インプラント治療における一つの大きな課題である、上顎洞底挙上術の必要性とその有効性について検証しています。特に、インプラントを支えるための骨の量が少ない場合にどのようなアプローチが最適かに焦点を当てています。
2010年の研究結果からは、骨の量が1〜5mmしかない場合でも、移植骨を使わずとも上顎洞の粘膜を持ち上げることで十分なスペースを確保し、新しい骨を再生させる可能性があることが示されました。また、骨の高さが3〜6mmの場合には、より長いインプラントを埋め込むための大規模な骨造成手術よりも、シンプルに粘膜を挙上して短いインプラントを使用する方が、合併症のリスクが低いことが分かりました。
2014年の改訂版では、残存骨量が4mmから9mmのケースに対する最適な治療法についてはまだ確かな証拠が得られていないものの、上顎洞底挙上術を行うことで合併症のリスクが高まる可能性があると指摘されています。
これらの知見は、近年では大規模な上顎洞底挙上術の必要性が疑問視され、より短いインプラントを使用した低侵襲な手術方法が推奨されるようになっていることを示しています。私自身、大規模な手術を得意とする背景を持ちながらも、患者様の利益を最優先に考え、不必要な手術は避けるべきだと常に心掛けています。
当院では、こうした最新の研究成果をもとに、より安全で患者様にとって負担の少ないインプラント治療を提供することに努めています。皆様が安心して治療を受けられるよう、常に最新の知識と技術でサポートいたします。